かつて、アルペンスキーの上級者たちは身の丈をはるかに超える長いスキー板を使っていた。長ければ長いほど、かっこよかった。カービングスキーが主流の今では考えられない長さだ。そんな1980年代に大流行した「昔のスキー」をショーケースに並べているスポーツ店が岩手県紫波町日詰にある。
ロシニョール、チロリア、ミズノ……。「懐かしいなあ」「値段が高くて手が出せなかったのを思い出すよ」。道行く人々が足を止め、見入っている。
目をひく細さ。直線的な形状。2メートルを超えるものもある。よく見ると、「¥99900」などと値札が貼られ、メーカーに「品質保証、保険補償」を申し込む書類が添付されている。すべて新品。全部で12セットある。
「もう、売っている人も、使っている人もいないでしょう。貴重なスキー板を多くの人に見てもらって、喜んで欲しいと思って」と話すのは「原スポーツ」の原修さん(87)。昨年の夏、倉庫に眠っていた在庫を見つけ、展示することにしたという。もちろん、希望があれば販売する。
私をスキーに連れてって!
見ているだけで、ユーミンの歌声が聞こえてくるようだ。「サーフ天国、スキー天国」「恋人がサンタクロース」……。お店にお邪魔すると、優しそうな笑顔で原さん夫妻が迎えてくれた。
店の歴史は古い。もともとは…